2018年3月の絵手紙エッセー『我慢、がまん』
何十年かぶりに昔暮らしていた町を 尋ねてみた。昭和四十年代後半のこと 小さな商店街でも賑やかで活気があった 横文字で書かれたお洒落な店 何度か入ったことのあるカツレツの食堂 パーマ屋さん、ツバメマークの自転車屋 その頃は垢抜けた店ばかりだと自慢気に 故郷のお母さんに何度も手紙を書いた そう、あれからもう半世紀? すっかり色あせた記憶を辿りながら ゆっくりと一人で歩いた あの頃はいつもお金がなくて ポケットにはジャラジャラ小銭ばかり 八百屋のおばちゃんに何度も 野菜を貰っては励ましてもらった 自転車屋さんのおっちゃんには 今にも壊れそうな自転車を修理させ 代金も受け取らなかった優しさを 恩返しも出来ないまま、町を去った どんな日もどんな時も我慢、がまん 若い日の苦い思い出である |