2016年12月の絵手紙エッセー『柚と母さん』
街中が賑わう騒がしさが 師走の知らせを届けてくれる 花屋の店先のポインセチアも クリスマスソングも最近の 静かな二人暮らしには無縁で いつもの賑やかな日常が一番だと 思うようになった そう言えば、遠い昔のこの季節 庭先の古木に色付く柚の実が 至る所で出番となっていた 白菜の漬物には欠かせない香り 傷んだ柚は風呂に入れて柚風呂に 父さんの晩酌の肴には柚みそが 七輪の上でいい香りをたてていた あの頃の田舎ではどこも質素で つつましい暮らしの知恵があった 柚が黄色に色づくと師走の訪れと いよいよ冬到来に知らせだった あの遠い日、クリスマスソングは 流れていなかったけれど、なぜか 母さんは忙しさも、嬉しそうだった |