2020年3月の絵手紙エッセー 『仲良し』
季節は紛れもなく春はやって来た 畳の部屋を陣取っているお雛様たちが 賑やかなお客様になった いつもの二人暮らしの静かな部屋が 何だか、いつもと違う雰囲気なのだ たかが人形?そこに並べただけなのに まるで春の妖精達が舞い降りたような ほんのりと暖かな空気に包まれている 耳を澄ませていると、コソコソコソ ウフフフフ~、誰かが お喋りに夢中になっているような 楽しげな話し声にも聞こえる 『ねえ、お父さん。賑やかでいいね』 暖かな縁側で新聞に目をやる夫に めずらしく優しい言葉をかけた 『うん、そうだな』 相変わらずの老夫婦の会話だが それでも夫の老眼鏡から覗いた 目は優し気に見えた やっぱり仲良しの方がいいよね 元気でなくちゃね、お父さん |