やちよ絵手紙の森美術館

2017年2月の絵手紙エッセー『想い届けて』

ガラス越しの陽射しが何となく
春の近付きを感じさせる一日だった
冷たい風もなく人の気配もなく
静かな一日だった
出窓から庭に目をやると
梅の古木にメジロが二羽とまって
まだ花を広げない蕾に口ばしを入れ
カサコソと何やらついばんでいる
静かな昼下がりだった
狭い中庭に出て洗濯物を取り込む
浅い春の陽射しをいっぱい含んだ
腕の中の衣類は、少ないけれど
静かな幸せを感じさせてくれる
塀の根元にこんもりとした植木から
おや?いい香り。沈丁花の花だ
私のエプロンの裾が風を作った瞬間
微かなもう一つの春を感じた
いつもこの季節を迎える頃になると
姑は待ちわびたように毎日庭を眺めた
ほら、今年も沈丁花が咲きましたよ
お姑(かあ)さんの好きな花の一つでしたね

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